宇宙に存在する漆黒の存在、ブラックホール。その影を撮影することに世界で初めて成功したようです。
ブラックホールとは一体何なのか?
ブラックホールと聞いてどのようなものを思い浮かべるでしょうか? 「宇宙にあるなんでも飲み込んでしまう黒い渦」というのが多くの方のイメージでしょう。そのイメージは概ね正しいですが、誤りも含まれています。
まず、ブラックホールが宇宙にあるということには間違いありません。厳密にはどこに存在してもおかしくないのですが、近くにあると僕たちまで飲み込まれてしまいます。基本的に僕らから遠い宇宙に存在すると考えて問題ないでしょう。
次に、なんでも飲み込んでしまうというのもほとんど間違いなし。ブラックホールの正体は非常に重力が強い天体なので、正の質量を持つあらゆる物質はブラックホールに引き寄せられます。自分の体は負の質量をもっている・・・という方でなければ間違いなく飲み込まれることでしょう。
黒いことも間違いなし。ブラックホールは超重力の天体なのですが、あまりにも重力が強すぎて光すら曲げてしまいます。ブラックホールに近づくほど重力はどんどん強くなり、事象の地平面と呼ばれる領域内では光すら脱出できなくなるため、ブラックホールはまるで光を発しない黒い空間のように見えるのですね。
最後に渦を巻いているかどうか。これは基本的には誤りです。宇宙空間には空気や水が存在しないため、そもそも渦を巻くものがありません。(竜巻は空気が、渦巻は水が渦を巻いている)。ブラックホールに飲み込まれるものが渦に巻き取られるような曲線を描いて落ちていくことはあるかもしれませんが、ブラックホール自体が渦を巻いているわけではないのです。
ブラックホール – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブラックホール
光すら脱出できないブラックホールをどうやって観測?
ブラックホールは光すら脱出できないほどの超重力を持った天体です。この世界で最も速度が速い光が脱出できないとなると、もはやブラックホールから脱出できる物質は存在しません。何も出て来ないため、ブラックホールを直接観測することは不可能です。
直接観測できないなら間接的には可能なのでしょうか?その答えはイエス。今回世界で初めて撮影されたブラックホールは間接的な方法で撮影されました。
事象の地平面の内側からは光であっても脱出できないのですが、逆に考えればそのほんの少しでも外側であれば脱出可能なので、命かながら脱出してきた電波(光と同等)を捉えたのです。
ブラックホールに引き寄せられた物質やガスは非常に速い速度に加速され、強力な電波を発します。当然中心に近づくほど速度は早くなるため電波も強くなるのですが、事象の地平面の内側では重力が強すぎて電波が脱出できません。
その結果、中心から一定の距離までは強力な電波が観測されるが、中心付近からは観測されないというドーナツ状も模様が観測できます。これが今回ブラックホールを撮影したという成果につながっているのです。
ブラックホールの撮影に成功 世界初 一般相対性理論を証明(毎日新聞) – Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190410-00000094-mai-sctch
理論的に考えるのは簡単なのですが、実際に観測するとなると話は別。この世界的偉業を成し遂げるまでの関係者の努力は相当なものだったでしょう。この成果が天文学、物理学のさらなる発展につながることを願っています。