2019年4月7日午前9時に「GPSリセット」が実行された 必要な理由をGPSの原理から考えてみましょう

エンジニアリング

本日GPSリセットが実施されたようです。20年ぶりの実施で前回は混乱も発生。なぜこのような処理が必要なのでしょうか?


Garmin GPSMAP 64s 日本語仕様 city+山岳詳細地図

 

GPSはアメリカで軍事用に開発されたシステム

まずはGPS システムの歴史から確認していきましょう。

GPS は複数の人工衛星が必要なシステムで、その衛星の打ち上げは1989年から開始されました。その4年後の1993年に「初期運用宣言」が、更にその2年後の1995年には「完全運用宣言」が発表され、GPSのシステムの運用が開始されました。

GPSは元々軍事用に開発されたシステムということで、軍事向けと民生向けで精度が異なっています。2000年まではその差が顕著で、以下のようになっていました。

  • 軍事向け精度:16cm
  • 民生向け精度:100m

当時の民生向けの精度は100m。流石にこれでは使い物になりません。民生向け機器にGPS受信機が登載され、広く使われだした2000年以降は規制が緩和され、以下のような仕様となっています。

  • 軍事向け精度:16cm
  • 民生向け精度:10m

GPS受信機は現在ではほとんどすべてのスマートフォンに搭載され、誰もがマップアプリで自分の位置を確認できる時代となっています。自分の位置がたまにフラフラと移動するのは、このGPS の精度によるものと考えていいでしょう。

グローバル・ポジショニング・システム – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/グローバル・ポジショニング・システム

 

宇宙の衛星から時間情報が降り注ぐ

では、GPS システムはどのようにして位置情報を取得するのでしょうか。

まず理解しなければいけないのは、僕たちの端末はGPS 衛星に対して何かを送っているわけではないということ。僕たちの端末は宇宙にあるGPS 衛星から信号を受け取っているだけです。TV のBS 放送と同じと考えていいでしょう。

そして衛星から送られてくるデータが、一言で言えば「時間情報」。GPS の各衛星が、「僕はxxx番の衛星で、現在何時何分何秒です」を地表に向けて電波として送っています。

発信された電波は光の速度で地表に届きます。ですが、自分がいる位置と複数あるGPS 衛星との距離には差があるため、各衛星から届く時間情報にも差が生じます。予めどこにどの衛星がいるかということは分かっているので、時間情報の差から自分の位置が計算できるという原理です。

GPS システムで何よりも重要になるのが時間情報。各衛星は時間がずれないように様々な補正を施しています。そして今回リセットが必要となるのもこのためです。

 

時間のカウンタの上限に達する

GPS はいくら高度なシステムといえども基本設計は1989年以前。当時はコンピュータの性能やリソースにも制約が多く存在し、時間を数えるカウンタにも上限がありました。

そのカウンタはおよそ1024週間(20年くらい)でMAXに。それ以上カウントすることができなくなります。そのままでは世界中でGPS が使用できなくなり大問題となるため、カウンタを0にリセットすることで対応します。

実は同様のリセットは1999年8月21日にも実施。当時はリセットを考慮していないシステムが存在していて、一部のカーナビで正常な位置が表示されない不具合が発生したようですね。

 

今回のリセットでは目立った不具合は発生していない様子。以前の不具合を教訓にしっかりとした対策が取られたということでしょう。