先日、キログラムの定義が130年ぶりに変更のなるとのニュースが入ってきました。
最も身近な質量の単位であるキログラム。なぜ変更する必要があり、どんな影響があるのでしょうか?
1キログラムはどう決めていた?
自分の体重を測るとき、体重計を利用すると思います。その体重計はどうやって調整されたのでしょうか?
おそらく、基準となる重りを使って調整したのでしょう。天秤と分銅を使って行った理科の実験と同じように、何かの重さを測るためには基準となる重さが必要です。
では、その基準となる重りはどうやって調整したのでしょうか?・・・さらに上位の正確な基準となる重りを使って調整します。このように、重さの基準はどんどん上位へつながっていくのですね。(トレーサビリティ)
そして最後には「国際キログラム原器」へたどり着きます。これは1889年に製造された人工物。当時最先端の技術で製造された「1kg」の定義そのものです。
見た目は単なるおもりなのですが、その保管方法は厳重。化学変化の影響を抑えるために2重のガラスビンでシールされて金庫に保管されており、さらにそこへは異なる三種の鍵がないと立ち入れないという手の混みようです。
日本にはキログラム原器のコピーがあり、こちらも厳重に保管されています。
キログラム原器から物理定数へ
130年に渡って世界の質量の基準として機能してきたキログラム原器ですが、色々問題が生じてきました。
極めて安定した金属であるプラチナを主成分としたキログラム原器であっても、どうしても不純物が付着し質量が増加してしまいます。またその不純物を落とすために洗浄を行うと急激の質量が低下してしまうのですね。(とはいえ50μg(指紋一個分)程度)
そのため「人工の原器」に頼らない「不変の物理量」による定義が長年模索されつづけ、ついに先日、物量定数を用いた定義に変更されることとなったのです。
The kilogram, symbol kg, is the SI unit of mass. It is defined by taking the fixed numerical value of the Planck constant h to be 6.62607015×10−34 when expressed in the unit J⋅s, which is equal to kg⋅m2⋅s−1, where the metre and the second are defined in terms of c and ΔνCs.
生活に影響はある?
定義の変更は2019年5月に行われる予定です。宇宙を含むすべての質量の定義が変更になるのですが、突然体重が2倍になったり、半分になったりすることはありません。
質量は人間が(いわば勝手に)決めたものなので物理法則に影響はありませんし、これまでとの誤差はきわめて微小なため、体重計の目盛りが狂うこともないからです。
科学界にとっては130年ぶりの大事件なのですが、世間にとっては何も影響ありません。

僕個人としては衝撃的だったこのニュース。一般の方々は気にする必要もありませんが、学生さんはテストや面接で問われるかもしれないのでチェックしておいた方がいいかもしれません。