スイングバイで宇宙船を加速 惑星からパワーをもらいます

エンジニアリング

先日公開したボイジャーについての記事の中で、ボイジャーは宇宙の果てを目指して飛んでいると掲載しました。
宇宙の果てを目指して飛んで行くには、太陽の重力を振り切る程のスピードが必要
です。果たしてどうやってそれだけのスピードを得たのでしょうか?

地球から最も遠い人工物 ボイジャー1号,2号

太陽の重力から脱出するのは簡単なことではない

太陽は非常に重くとんでもない重力を有しています。地球が太陽の周りを回っているのも、地球が太陽と比べて圧倒的に軽いためです。(そんな軽い地球に引っ張られるほど人間はさらに軽い)
そうなると、人間の作り出した宇宙船が太陽の引力を振り切って宇宙の彼方へ飛んでいくのは、並大抵のことではありません。
そんな困難を克服してくれるのが「スイングバイ」という方法。地球から離れたところで宇宙船を加速できる、魔法のようなテクニックです。
スイングバイ – Wikipedia

スイングバイで惑星からパワーをもらう

スイングバイの方法は簡単。「宇宙船に惑星の近くを通過させる」だけです。
惑星は宇宙船と比べて大きな重力を有して太陽の周りを公転しています。この公転するパワーを宇宙船がもらうことで、宇宙船が加速します。
と、口で言うのは簡単ですが実現には高い技術と繊細なコントロールが必要。惑星から遠く離れた地点を通過しても十分な加速はできませんし、惑星に近すぎると墜落してします。
スイングバイ時には宇宙船が飛ぶ方角も変化するため、そこにも注意が必要。日本の探査機はやぶさが地球でスイングバイを行った際には、地表からの誤差1km以内,速度の誤差1cm/s以内で通過させるように制御を行ったようです。(宇宙空間でこれは驚異的)
ボイジャーもこの方法で加速して宇宙の果てへ飛んで行ったのですね。

スイングバイで速度を落とすこともできる

加速時とは反対に、スイングバイを行なって速度を落とすことも可能です。
これも口でいうのは簡単で「加速時とは反対側を通過させる」だけ。宇宙船のパワーを惑星に与えることで減速するのですね。
一見意味のないことに見えますが、実はこれも結構重要。例えば金星探査のために地球から出発した宇宙船はそのままでは金星を通り越してしまいます。
そのためスイングバイで速度を落とし、金星を周回するように調整します。
(宇宙には空気抵抗がないため、惑星の重力に頼るしか減速する方法はない)
もちろん速度を落とし過ぎれば墜落してしまうので、繊細な調整が必要です。

ボイジャーは1977年に打ち上げられた宇宙船ですが、その時点で人類は地球から遠く離れた場所の宇宙船を細かくコントロールすることができたと考えると、途方もないことのように感じます。
当時と比べて現代の宇宙開発は下火ですが、これまで積み重ねた技術を後世に伝えていってほしいと感じますね。